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古典的なモンスターをカラーで復活させた英国のハマー・プロは、世界中にホラー映画のブームを巻き起こした。その結果、雨後の筍のように安価な類似品が多数排出されることになったが、残念ながらその殆どはハマー作品のレベルに遠く及ばない凡作であった。
さて、モンスター映画の老舗であるユニバーサルが、『フランケンシュタインの逆襲』(57)を配給したワーナー・ブラザーズの大成功を黙って見ているはずはなかった。とは言っても自社でモンスター映画を製作したわけではなく、ハマー・プロが次回作として計画した『吸血鬼ドラキュラ』(58)の米国配給を買って出たのである。この作品は、公開から半世紀近く経った現在もなおドラキュラ映画の最高傑作と評価が高く、ホラー映画のオールタイム・ベストの1本に数えられる名作である。その結果、ドラキュラは先のフランケンシュタインを上回る特大のホームランをかっ飛ばし、当時経営危機に陥っていたユニバーサルを倒産の危機から救った。ドラキュラはクリストファー・リーの当り役となり、英国の弱小独立プロだったハマー・プロは世界の注目を浴びることになった。

『吸血鬼ドラキュラ』(58)
ロビーカード
『ミイラの幽霊』(59)
クリストファー・リーが
演じたカーリス(右)
『吸血狼男』(61)
オリバー・リードの狼男(左)と
イボンヌ・ロメイン

ユニバーサルはモンスター映画を自社製作しなくなったが、ハマーに製作費を提供することで配給権を確保し、英国産のモンスター映画を生み出すことに一役買ったのである。ユニバーサル提供=ハマー作品では、『ミイラの幽霊』(59)、『吸血鬼ドラキュラの花嫁』(60)、『吸血狼男』(61)、『オペラの怪人』(62・TV放映) The Phantom of the Opera、『吸血鬼の接吻』(63)、『フランケンシュタインの怒り』(64)など、御馴染みのモンスター&ホラー映画が製作・配給されている。

『フランケンシュタインの怒り』
(64)
モンスターを演じたのは
プロレスラーの
キウイ・キングストン
『ドラキュラ』(79)
フランク・ランジェラの
ドラキュラも、ベラ・ルゴシと
同様に舞台劇でヒットして
映画になった。
『ハムナプトラ/
失われた砂漠の都』(99)
スティーブン・ソマーズが
派手な特殊効果で復活させた
イムホテップ。

ユニバーサル自体は1970年代後半のドラキュラ・ブームに乗じて『ドラキュラ』(79)を製作したものの、長年にわたって自ら生み出した四大モンスターには手を着けていなかった。しかし、スティーブン・ソマーズ監督が『ハムニプトラ/失われた砂漠の都』(99)で『ミイラ再生』(32)のリメイクを大ヒットさせ、今度は『ヴァン・ヘルシング』(2004)で残りの三大モンスターを復活させようとしている。今まさにユニバーサルは、自分達が持っていた大きな財産=モンスターに“再び”気がついたようである。






石田 一(いしだはじめ)
1956年大阪市生まれ。作家、映画史研究家。SFホラー映画の専門家として多くの書籍や雑誌を執筆・編集。
73年、怪奇SF映画研究会「MONSTERS」を設立。76年よりプロのライターとして、専門ジャンルの映画記事を書き始める。80年、日本初のホラー映画専門誌『ホラー・ワールド』(MONSTERS出版)を発行・編集。94年、『日本版ファンゴリア』を発行、初代編集長を兼任。99年、長編小説『斬魔京都変』で作家デビューし、現在は作家&ホラーSF映画史研究家として活躍中。

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